株式会社は、利益の配当をする場合、金銭以外の財産を配当対象とすることができ、これを現物配当(現物分配)といいます。
今回はこの現物配当をテーマに概要をまとめてみました。
適格現物分配
現物分配の税務上の取扱いについては、組織再編税制の一つと位置付けられ、配当する法人を「現物分配法人」、配当を受け取る法人を「被現物分配法人」とする規定があります。
そのうち、現物分配法人が内国法人で、被現物分配法人がその現物分配の直前に現物分配法人との間に完全支配関係がある内国法人であるものを「適格現物分配」といいます。
適格現物分配の場合には、適格現物分配の直前の帳簿価額により現物分配対象物件が譲渡されたものとして取り扱われ、含み損益に対する課税はなされません。
また、利益の配当なので、利益積立金額を同額減少する税務会計処理をします。
なお、所得税法上、適格現物分配は配当等の範囲から除かれており、現物分配法人には源泉徴収義務が生じません。詳しくは、国税庁のページをご参照ください。
現物分配と消費税
配当は消費税法で定める「対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為」に該当しないため、建物等を現物分配した場合でも消費税対象外取引(不課税取引)となります。詳細は、国税庁の消費税のページをご参照ください。
現物分配の便利な利用
現物分配は、会社法で禁止されている子会社の親会社株式保有状態の解消方法として利用されたり、子会社の子会社(孫会社)を子会社にする会社関係の再編(兄弟会社化)のために使われたりします。
子法人株式に限った現物分配
兄弟会社化にする現物分配については、平成29年度税制改正で、非適格現物分配のうち、完全支配子法人株式を対象とする現物分配を、他の者による支配関係がない上場企業のような法人が実行する場合、これを「株式分配」という新類型の組織再編行為と規定し、共同事業要件を簡易にした5要件を充足すれば、適格株式分配として含み損益に対する課税のない帳簿価額での税務会計処理が認められます。
令和5年度税制改正では、子会社株式を現物配当する際、親会社に20%未満の出資持分を残すことも条件付きで許容する税制適格株式分配も規定されています。詳細は、令和5年度税制改正のポイントをご覧ください。